こちらの連載記事では、小中学生の算数・数学指導における各単元の要点や注意点等について、例題を交えつつ、詳しく解説していきます。
生徒が間違えやすい問題や勘違いの仕方を予め把握し、予防線を張りながら指導することにより、分かりやすいだけでなく、最短ルートで成績UPに繋げることが可能になります。
塾の授業は、学校の授業と比べ、対面で指導できる時間が非常に短いため、限られた時間の中で効率よく学習内容を定着させることが求められます。
そこで、今回は、大手進学塾の理系講師として10年以上の指導経験を持つ筆者が、その過程で培ったノウハウや知識を紹介しますので、これから算数・数学を担当される先生方は、是非、参考にしてみてください。
当連載記事では、特筆事項のない単元を除き、原則「1記事につき1単元」を目安に、小学4年生から中学3年生までの学習内容を網羅していく予定です。
今回は、小学4年生の第3回ということで「小4算数:わり算の筆算」を取り扱います。
≪小4算数の学習内容≫
1.大きな数
2.がい数(四捨五入・表し方・見積もり)
3.わり算の筆算
4.式と計算(四則混合)
5.小数(表し方・しくみ・四則計算)
6.分数(表し方・たし算・ひき算)
7.角の大きさ(表し方・はかり方・計算・三角定規の角)
8.垂直と平行
9.四角形(台形・平行四辺形・ひし形。長方形・正方形・対角線・性質)
10.面積(長方形・正方形・複合型)
11.直方体と立方体(性質・垂直・平行)
12.変わり方
13.折れ線グラフ
14.整理の仕方
≪本記事の流れ≫
① 小4算数「わり算の筆算」指導の手順 ・Step1 基本動作の徹底 ・Step2 商の立て方・商に0が立つ場合 ・Step3 商の見積もり方 ② 指導上のポイントと注意点
小4算数 「わり算の筆算」指導の手順
では、さっそく「わり算の筆算」における指導手順を解説していきます。
わり算の筆算は、小学4年生から新たに習得する計算技能であり、「95÷3」等の簡単な計算から、3桁以上の大きな数同士の計算問題までを扱います。
また、小4時点で「小数を含むわり算の筆算」も学習していくことになるため、筆算の基本的なルールや手順、考え方等を、ここでしっかり定着させておくことが非常に重要です。
教える順番や扱う問題の難易度によって、定着スピードに差が生じやすい分野なので、段階的にレベルUPできるよう、ステップ毎の要点をまとめました。
是非、参考にしてみてください。
小4算数 「わり算の筆算」指導の手順
Step.1 基本動作の徹底
Step.2 商の立て方・商に0が立つ場合
Step.3 商の見積もり方
Step1.基本動作の徹底
わり算の筆算指導では、まず「基本動作の習得」が、何よりの最優先事項となります。
基本動作とは、「①立てる→②掛ける→③引く→④降ろす」の4つの手順を指します。
基本動作を最初に徹底させる意図としては、2桁以上の大きな数や小数の筆算であっても、「やることは基本的に同じ」なので、まずは、この馴染みのない手順や形に慣れさせることにあります。
そのため、扱う問題の数字を、最初は「2桁÷1桁」「3桁÷1桁」等の簡単なものを選択し、商に0を立てる必要がある問題(412÷4)や、商の立てる位置が変わる問題(234÷5)は、なるべく避けます。
生徒の理解速度にもよりますが、新しい要素を次から次へと詰め込もうとすると、返って混乱を招いたり、定着の甘さに繋がったりするので、様子を伺いつつ、講師の方で解く問題の難易度を調整することが大切です。
少しずつ、慣れてきたら「余りが出る場合」や「たしかめ算」のやり方を復習する等、ごく基本的なルールについて教えてあげれば、Step1は完了です。
Step2. 商の立て方・商に0が立つ場合
2つ目のステップは、「商の立てる位置が変わる問題(234÷5)」「商に0を立てる必要がある問題(412÷4)」等の「特殊ルール」に対応する訓練です。
例えば、例題①であれば、最初に「商を立てたいけれど、2÷5はできないよね」と、234の34部分(青点線)を手で隠しながら説明します。
次に、4(一の位)だけを隠し、「だから、23÷5と考えて、3(十の位)の上に商を立てるんだよ」と、商を立てる場所の決め方を理解させていきます。
同様に、商に0が立つ場合は途中の計算を省略して良いこと(例題②の赤枠部分)等、類題演習を繰り返しながら、新しい知識の定着を図っていくことがStep2の要点です。
ちなみに、理由は後述しますが、このステップでも、扱う問題は「2桁÷1桁」「3桁÷1桁」等、「わる数を1桁にしておくこと」をお勧めします。
Step3. 商の見積もり
それでは、最後のステップ解説に入ります。
Step3の要点は、わる数が2桁以上になった場合でも、商に立てる数を素早く判断できるようにすることです。
なぜ、わる数が2桁以上の問題を、ここにきて初めて扱うかというと、計算力・暗算力が高い子を除き、大半の生徒が、ここで苦戦を強いられるからです。
上の例題③であれば、「832の中に289が何個か入りそうだ…」と検討を付け、商を百の位(2の上)から立てていくわけですが、最初に、何の数字を立てたらよいのか、予想できない子が大勢いるのです。
というのも、理由は簡単で「商の見積もりをて立てる練習を積んでいないこと」が要因としてあります。
そのため、わる数が2桁以上になる筆算問題に取り掛かる前に「600÷30」「3200÷700」等、概算による「商の見積もり方」を教え、ある程度練習してから筆算に入ることをお勧めします。
計算が苦手な子にとっては、負荷としてかなり大きいため、まずはstep1・2で筆算をスラスラできる状態にし、見積もりの練習を十分に積んでから、位の大きな数の問題に臨ませるようにしましょう。
ここがクリアできれば、あとは演習量を確保し、正確さと計算スピードUPを図ればOKです。
指導上のポイント・注意点
では、最後に、小4算数の「わり算(筆算)」を指導する上でのポイントと注意点ついて触れておきます。
ポイント及び注意点は、全部で3つあります。
① ノートの罫線に合わせる
② できる限り、暗算で処理させる
③ たしかめ算(検算)を習慣化する
① ノートの罫線に合わせる
わり算の筆算を指導する際、1つ目のポイントとなるのは、ノートの罫線に合わせ、筆算を書かせることです。
基本中の基本ではあるものの、高学年や中学生で、算数・数学を苦手とする子、ケアレスミスが多い子を指導していて感じるのは、やはり、この手の「基本」ができていない子が非常に多い、ということです。
数字や式の書き方、計算処理の方法などは、個人の「癖」や「習慣」によるところが大きく、一度、悪い癖や習慣を付けてしまうと、後になってから修正するのにかなりの時間を要することになります。
小学生の早い段階で、基本となる手順や動作をしっかり教えてあげることは、ときに指導内容以上に重要なことでもあるため、課題があるようであれば早期改善をお勧めします。
② できる限り、暗算で処理させる
2つ目の指導ポイントは、可能な限り、簡易な計算は暗算処理をさせていくことです。
特に、商を立てた後の「かけ算」や「ひき算」をする際は要注意です。
繰上りや繰り下がりの数字を書き込み過ぎると、誤読を招きミスが多発する要因となるからです。
どうしても、暗算が難しい場合は、欄外に筆算スペースを設け、処理させるようにしましょう。
③ たしかめ算(検算)を習慣化する
3つ目の指導ポイントは、たしかめ算の習慣化です。
ただ、問題を解く度に、一問一問丁寧にたしかめ算をしていては時間もかかってしまうので、「手段として、いつでもできるように練習を積む」くらいのイメージで、時々、確認を入れる程度で問題ないでしょう。
また、たしかめ算の計算も「暗算」でできるようになれば、さらに理想的です。
今回は、小4算数の「わり算(筆算)」における指導の手順、ポイント及び注意点等について、解説させて頂きました。
次回は、引き続き小4算数で「式と計算(四則混合)」を取り扱う予定です。
最後まで、本記事を読んでくださり、誠にありがとうございました。
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