塾講師・理系担当の先生向け「小5算数 ①小数のかけ算・わり算」の指導方法
こちらの連載記事では、小中学生の算数・数学指導における各単元の要点や注意点等について、例題を交えつつ、詳しく解説していきます。
生徒が間違えやすい問題や勘違いの仕方を予め把握し、予防線を張りながら指導することにより、分かりやすいだけでなく、最短ルートで成績UPに繋げることが可能になります。
塾の授業は、学校の授業と比べ、対面で指導できる時間が非常に短いため、限られた時間の中で効率よく学習内容を定着させることが求められます。
そこで、今回は、大手進学塾の理系講師として10年以上の指導経験を持つ筆者が、その過程で培ったノウハウや知識を紹介しますので、これから算数・数学を担当される先生方は、是非、参考にしてみてください。

塾での理系指導・小5算数「小数のかけ算・わり算」編
当連載記事では、特筆事項のない単元を除き、原則「1記事につき1単元」を目安に、小学4年生から中学3年生までの学習内容を網羅していく予定です。
今回は、小学5年生の第1回ということで小5算数「小数のかけ算・わり算」を取り扱います。

小5算数 「小数のかけ算・わり算」の出題パターン
では、さっそく「小数のかけ算・わり算」の代表的な出題パターンを見ていきましょう。
① 小数のかけ算
② 小数のわり算
③ 商と積の大きさ・文章題
出題パターンは、大きく分けて上記の3つあり、各パターンにおける例題と補足事項は以下の通りです。
① 小数のかけ算
小学5年生の算数では、新たに「小数同士のかけ算」を取り扱います。
小学4年生の段階で、「整数×小数」の計算技能は習得しているため、その発展内容に相当します。
基本的には計算問題が中心であり、小数点の移動処理がきちんと理解できれば問題ありません。
積の下の位が0になる計算の処理方法も、小学4年生で学習済みであるため、新しい要素としては「小数点の移動処理」のみとなります。
② 小数のわり算
2つ目の「小数のわり算」は、かけ算同様、「小数同士の計算」がメインであり、「小数÷整数」については、小学4年生時点で学習済みとなります。
小数同士のわり算(計算問題)のバリエーションは以下の通りです。
・ 割り切れる計算
・ 商が一の位に立たない計算(小数第一位以下から)
・ 割り切れるまで、割り進める計算(例題①)
・ 商を指定の位まで求め、あまりも求めるパターン(例題②)
・ 商を指定の位まで求め、四捨五入するパターン(例題③)
いずれのパターンも、小学4年生時点で習うわり算の筆算と仕組みは一緒なので、小学4年生の学習内容がきちんと習得できていれば問題ない分野です。
但し、小数点の移動処理やあまりを求める際のルールについては、新たに教える要素もあるので、その点のみ注意が必要です。
③ 商と積の大きさ・文章題
3つ目の出題パターンは、小数同士の計算で、商や積が掛けられる数・割られる数よりも、大きくなるか、小さくなるかを問われる問題、文章題などが中心です。
判断基準さえわかれば、商や積の大小については難なくクリアできるものの、「なぜそうなるのか」という仕組みについては、あまり言及されないことが多くなります。
仮に説明をスルーしたとしても、特に大きな支障が出ることはありませんが、時間に余裕があれば、「等分除」や「包含除」などの説明をしてあげると親切です。
文章題については、小数倍や単位量あたりの大きさと絡めた問題が多く、後に学習する「割合」や「速さ」の単元とも大きく関係してきます。
小数同士の計算ができるようになったことで、今まで「なんとなく、正解になりそうな組み合わせ」で、文章題を乗り切ってきた生徒たちは通用しなくなるため、算数の得意・不得意がより顕在化しやすくなります。

指導上のポイントと注意点
では、次に「小数のかけ算・わり算」を指導する上でのポイントや注意点等について解説していきます。
① 小数のかけ算の指導ポイント
② 小数のわり算の指導ポイント
③ 文章題の指導ポイント
① 小数のかけ算の指導ポイント
小数同士のかけ算においては、「小数点の移動処理」さえクリアできれば問題ありません。
小数を一度、整数として考え、その際「合計、何回小数点を移動したかをカウント」し、計算終了時に「同じ回数分、小数点を戻すだけ」という非常にシンプルな作業です。
小学4年生時点で同様のやり方を学んでいれば、特に苦労することなく通過できます。
但し、昨今の入試や指導要綱の傾向を踏まえると、「なぜ、このような考え方ができるのか」という理由説明もできた方が良いので、指導時にはその点についても触れておくようにしましょう。
② 小数のわり算の指導ポイント
小数同士のわり算(筆算)では、小4で習った「小数点を上に移動→商を立てる→かける→引く→降ろす」というおなじみの手順に加え、計算前に「わる数の整数化(小数点の移動処理)」という工程が入ります。
基本的には、この「わる数の整数化(小数点の移動処理)」という新たなルールを習得できれば、いずれのパターンの問題にも対応可能となります。
但し、「余りも求める計算問題」については、余りの位を間違えてしまうことがよくあるので、余りを求める際は、「小数点を元の位置(移動前)から降ろす」ということに注意させる必要があります。
③ 文章題の指導ポイント
文章題については、様々な問題のバリエーションがありますが、ここでは特に出題されやすい「小数倍」の指導方法について解説します。
小数倍の文章問題では、主に「AはBの□倍である」「□はBのC倍である」「Aは□のC倍である」の3パターン分類され、それぞれ□にあてはまる数を求めるという問題が中心です。
この3パターンをより文章題らしい表現に直すと、以下のような例題になります。
例題1 5.1は2.5の何倍ですか。
例題2 2.4の1.5倍はいくつですか。
例題3 ある数を1.6倍したら、1.44になりました。ある数を求めなさい。
ここで重要なのは、生徒自身が「かけ算で求めるのか」「わり算で求めるのか」を自ら判断し、わり算の場合は「わる数とわられる数」を適正に見極められるようになることです。
指導方法としては、「□を用いて式に表す練習」が効果的です。
例題1 5.1は2.5の何倍ですか。
→ 2.5×□=5.1
例題2 2.4の1.5倍はいくつですか。
→ 2.4×1.5=□
例題3 ある数を1.6倍したら、1.44になりました。ある数を求めなさい。
→ □×1.6=1.44
このように、□を用いて式に表すことができれば、そのあとの計算手順は至ってシンプルです。
もし、これでも「式がつくれない」「このあとの計算ができない」ということであれば、小数部分を2や4などの簡単な整数(偶数)に置き換えると、理解させやすくなります。
ちなみに、ここで求められる判断能力は、後に学習する「単位量あたり」「割合」「速さ」「人口密度」などの学習分野に加え、中学生理科の「密度」「濃度」「質量パーセント濃度」等にも影響する、極めて重要度の高いものになりますので、時間を掛けてでもしっかり習得させておくことをお勧めします。

まとめ
今回は、小5算数の「1.小数のかけ算・わり算」における指導の手順、ポイント及び注意点等について、解説させて頂きました。
次回は、引き続き小学5年生で、「2.倍数と約数」を扱う予定です。
最後まで、本記事を読んでくださり、誠にありがとうございました。
過去に大手進学塾で正社員(室長・エリアマネージャー兼任)として7年間働いておりました。
教育、受験業界に関して、専門的な知識があります。
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